夏の日差しと狼のいろ。


 しばらくしてほとぼりが
 冷めると、

 改めてツキは
 リルが捕まっている理由を
 聞くことにした。



 「リルちゃんはどうして
  捕まっているの?」

 ツキが尋ねると
 リルは言いにくそうに、
 ちらっとウルーたちを見て俯く。



 それを見てツキは
 アルたちにちょっと待って、
 と言ってリルの口元に

 耳をよせた。



 リルは安心したように
 雪狼の言葉を小声で呟く。


 『私…昔の、姫が
  ……さらわれたみたいに
  人間に奴隷としてさらわれた』



 ツキは続きを促すように
 頷く。


 リルはきゅっと手に力をこめ
 怒りを含んだ声でいった。


 『…私、歌が上手くて。
  だから、人間の
  愛玩奴隷として連れて来られた。

  …私は唄うのも奉仕するのも…』




 リルは一旦目をつむってから
 今度は完全に
 怒りの色を宿した瞳で言った。



 『…嫌になった
  だから、やめたの…そしたら
  人間は、私を…
  ……"唄を忘れたカナリアだ"って』



 「……ッ」



 ツキは自分のこととを
 今の話を重ねていた。


 あの奴隷としてこき使われた日々を
 今でも忘れない。




 助けてあげたい、と
 ツキは思った。
< 169 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop