夏の日差しと狼のいろ。

金色の悪夢



*ツキSide





 出血のせいか、
 ツキはいつの間にか気絶して
 いたらしい。


 目を覚ますと、
 ウルーが覗き込んでいた。



 ツキは無言のまま、
 ぼーっとしていた。



 アルがどうなったのか
 それだけが気になる。


 あれから兎達が
 追いかけてこないことから

 たぶん…アルがなんとか
 してくれたのだとわかった。



 「アルちゃ…ん…」


 ツキが虚ろに呟くと
 ウルーが手を握ってくれた。



 「大丈夫だ、死んだと
  決まったわけじゃない」


 ウルーの目も不安そうに
 くもっていたが、

 ツキは頷いた。




 あれからまだ雨が降って
 いるみたいで

 ツキ達は濡れていた。



 少し、小降りになったみたいだ。


 ツキはゆっくりと体を
 起こし、手首を見た。


 ウルーが巻いてくれたのか
 服の切れ端が強く
 まきつけられていた。


 いつの日かも、
 してもらったっけ。


 おかげで血はだいぶ止まっている。



 「ウルー…ありがと…」


 ツキはそういい立ち上がろうと
 したがー…











 「…無理するな」


 そういってウルーに
 ささえられていた。



 よろめいてしまったみたい…



 「ほら」

 ツキがちょっとくらくら
 する頭を抑えていると


 ウルーが背中を向けて
 しゃがんだ。




 「え…何?」


 ツキがきょとんと聞くと
 ウルーはため息のかわりに
 尻尾を揺らす。



 「ふらふらじゃ、危ないだろう」


 「あ…」


 そこでようやく気がついた。


 おぶってくれる、と
 いうことなのだろうと。


 ツキはぶんぶんと
 首を振り、言う。



 「む、無理!無理よ!」


 「…っ、いいから」


 なかなか言うことを
 聞かないツキにウルーは
 とうとう無理矢理
 ツキを担ぎあげてしまった。



 「や、やだ離して!」



 ツキが真っ赤になって言うと
 ウルーは一度ツキを下ろしてから
 また背中を向く。




 ツキはしぶしぶ
 ウルーに体をまかせた。



 (別に嫌なわけじゃないけど)


 ツキはウルーの温もりに
 少し、安心する。


 それを見て、ウルーが微笑む。



 「ちょっと元気、出たか」


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