夏の日差しと狼のいろ。
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「ねぇ、使ってみていいかな?」



まだ森の中を歩いていた
ツキは時計を取り出し、

光を反射して
ちらちら光るそれを見つめて、

前を行く二人に尋ねた。




「まったく…さっきから
うるさいですね!

じゃあ、使ってみたら
どうですか?」



興味なさそうに
しているがアルも興味はあるみたいだ。



ウルーも頷いたので
ツキは時計を手に持ち直し


ラスクに教えて
もらったみたいにした。



ー連絡したい人を、思う。
 その近くに時計があれば
 成功だ。




ツキは育て親でもある
シルクを思った。




「わ、わっ」


次の瞬間、時計がぱっと
光り、ツキは目を細める。



光りが止んだとき、
時計の中に

懐かしいシルクの姿が見えた。




シルクもびっくりしたのか

目を真ん丸くしている。




「ツキ!?何、何なのよ、これは?」


向こうからしたら
自分の家の時計に


ツキ達が映っているはずだ。



「シルクーっ!!!」



ツキは懐かしさのあまり
ちょっと涙ぐんで叫ぶ。



するとシルクも
嬉しそうに微笑んだ。



「久しぶりね、ツキ。
旅は順調?
またケガしてないでしょうね?」


心配そうに言うシルクに
ツキは大丈夫、と言った。




そしてツキはようやく
時計について説明する。


それを聞いて、シルクは
「じゃあいつでも連絡、
とれるのね!」と嬉しそうにした。



ツキも喜んでいると
ウルーが後ろからひょっこり
時計を覗きこんだ。




「あら、ウルーくん。
元気?ちゃんとツキを守ってる?」



「大丈夫です」



ウルーは軽く微笑んで
そう答えた。



敬語を使うウルーに

…シルクには、頭が
あがらないのかしら?と
ツキはくすりと笑う。



それだけ言うとウルーは
ひっこみ、代わりにアルが

時計を覗きこんだ。




…ちょっとツキに、
隠れるようにして。


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