夏の日差しと狼のいろ。

「あら?確かアンタは…えっと
貴族ちゃん」

悩んだすえ、
シルクはよくわからない名前で

アルを呼んだ。



そういえば、
シルクは白猫の時のアルを
世話しただけで


旅に出る前、アルを
きちんと紹介してなかった。



「白猫ちゃんだよ、白猫ちゃん」


ツキが紹介すると同時に
アルはポンッと猫に戻った。


ツキは猫のアルを
抱き抱えあげ、

シルクに見えるようにした。




「ああ!あの怪我してた猫と
同一人物だったのね?


ツキのまわりには
そういう子達ばっかりね」



くすくすと笑うシルクを見て
ツキも笑う。



腕の中では
アルがおとなしく抱かれている。



「アルっていうの、この子。」



軽く紹介すると
アルはひょいと尻尾を上に
あげた。



シルクもよろしくね、と微笑む。







それからしばらく話し、
ツキはシルクとの通信を切った。

先に、進まないと。



ツキはぱちんと時計をしまうと
また森を歩き出した。




森の出口はもうすぐそこだ。



なんだか寒い北風が
吹いてきている気さえする。



「…!見ろ、アレ」



先導していたウルーが
森の出口あたりで

立ち止まり、何かを指している。




歩くのが面倒なのか
猫のままツキに抱かれている
アルを抱えながら、


ツキはてってっと
ウルーの元に駆け寄る。





「わぁ…」


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