夏の日差しと狼のいろ。


「…闇猫族だけじゃないの」



ツキは悲しみをおさえ、
そう言った。



今までに闇猫族以外で
目をつかうのは見たことがない。


『しらねぇのか?
まぁいい、そのうちにわかるさ』


サンドルはゆっくりウルーの
傍に戻った。



ウルーも顔をあげ、
銀色の尻尾を揺らした。



『行こうじゃねぇか、兄弟』


サンドルがさっと出口に
駆け出し、ウルーも
それにぴたりと続く。



「まって!!」


ツキは叫びながら
あとを追ったが狼には追いつけない。



扉を出た時には
二匹はだいぶ遠くまで
駆けて行っていた。



ウルーの銀色の毛は雪にまみれて
見えにくいが

サンドルの黒い毛はよく目立つ。


ツキは気がついたら
大きな声で叫んでいた。



「ウルー!嫌!行かないでよっ!!」

しかしウルーは
一度振り向くと、そっと言った。






『さよならだ、ツキ。』








「あ…」


夢と同じ場面。同じセリフ。
同じ景色…




すべては夢通りになってしまった。




「ウルーーーーーーーーーーーっ!」



ツキの叫び声は
雪の中に溶けて消え、


やがてウルー達の姿は
見えなくなった。


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