夏の日差しと狼のいろ。


ツキはサンドルの頭より高く
上昇した。


サンドルが巨大な狼の顔を
こちらに向けてあげる。


ツキはチャンスを待った。



サンドルがこっちにむかって
噛み付こうと口を開ける瞬間、

サンドルの口にワインを
流し込むしかない。


そのチャンスを逃すと
ツキはもう空へはとひあがれない。



『ククッ…ばか野郎!
逃げたつもり、か?』



サンドルは口をぐあっと開けて
ツキに噛み付こうと
牙をきらりと光らせた。




…今だ!



ツキはアルがあらかじめ
緩くしておいてくれたのであろう、
ワインの詮を勢いよく抜いた。

















ーパリン…







ツキの氷の羽が、かみ砕かれた。



ツキはすごい勢いで
地面に向かって落下していった。



その腕に抱きしめられている
ワインの瓶は"空"になっていたー…




「ウルー…私、やったよ…」



ツキは微笑んだ。



次の瞬間、
サンドルは巨大な体を強張らせ
ぐらりと体を歪めた。



伏せた姿になった狼が
悔しそうに歯を剥き出したが、


ふらりと倒れた。




それと同時に、
ツキも地面に落ちた。


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