神様修行はじめます! 其の二
・・・胸が、痛いよ。

門川君の言葉のひとつひとつが、悲しくて痛い。


神の一族って、なんだかすごい立派で、特別でエラそうに聞こえてた。

ちょっとばかり、あたしも気分良かった。

あたしは特別な力を持ってる。結構カッコイイかもって。


自分がただの人間でしかないって事は、よく分かっていたけれど。

神様『みたい』って、例えられてるだけなんだって知ってはいたけれど。

それでも、どこか心の奥に優越感があったと思う。


その言葉の奥に隠された意味を、あたしは知らなかった。

とても哀しい意味を・・・。


「わらわは神の母じゃ。物心ついてより、ずっとずっとそのように言われてきたのじゃ」

だから絶対に、絶対に、絶対に・・・


あたし達の言葉を聞いているのかいないのか。

オウムの会話のように奥方はただ繰り返し続ける。

意味なんか、ほとんど分かってもいないように。


どこか遠くを見ているような、記憶の淵を彷徨うような視線。

なんて頼りない姿だろう。

さっきまでの、胸を張って自分を神だと宣言していた姿とは比べ物にならない。

まるで何も知らない幼い少女のようだ。


見える気がする。

まだ幼い、花嫁候補になったばかりのちいさな少女。


ぽつんと座った少女に周りのすべての大人が寄ってたかって言い含める。

お前は特別。お前は神の母。

だから絶対に誰にも負けるな。

何を犠牲にしても勝て。

絶対に勝て。絶対に絶対に絶対に・・・
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