神様修行はじめます! 其の二
奥方が今まで犯してきた数々の非情な罪。

それは消えないし、それこそ絶対に許すつもりもない。

でもその姿は・・・

教え込まされた言葉を、機械みたいに繰り返す姿は哀れだと思った。


「自分が神様だって思うんなら・・・それでもいいよ」

そう思わなければ生きていくのも苦しいのなら・・・

それでいい。ただ・・・


「あんたが神だというのなら、この世界に手を出さないで」

この世界は、人の世界。

人が治めて生きていくんだ。

自分を神だと信じる奥方でもなく。

命を亡くしたお兄さんでもなく。


「門川は、僕が継ぎます」


そうだ。この世に人として生きる、門川君が当主となる。

背筋を伸ばし、奥方とお兄さんに正面切って向かう彼が。

この断固たる決意に満ちた彼が背負うんだ。


そして生きて行く。

望む事のために、成すべき事を成して。

譲れないものを抱え、大きな荷物を背負い、歩いて、歩いて、歩き続けて。

ふと、いつか振り向いたときに・・・


気が付けば、そこに・・・

そこにきっと・・・



『ならぬ・・・』

暗い地の底から聞こえるような声が、それを拒否した。

お兄さん・・・。


お兄さんの体から、濃紫と黒の入り混じった気体が漂う。

すごく・・・すごくドロリとした密度の濃い湿った空気。

拒絶とか、否定とか、恨みとか、憎悪とか、憤怒とか・・・

そういった感情を全部混ぜ合わせれば、こんな色になるんだろうか。
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