神様修行はじめます! 其の二
『渡さぬ。誰にも渡さぬ・・・』

豪華絢爛な衣装をまとったミイラが、まるで生きてるように自在に動き回る。

そして門川君を追い立てた。


『渡さぬ。渡さぬ・・・』


口元を袖で覆いながら、懸命に門川君は身をかわす。

彼の着物の表面が、少しずつ腐って崩れていく。

あたしはまた激しく咳き込み、慌てて息を止めた。


座敷の隅に飾られていた金魚鉢の中の金魚。

白く丸いお腹を上にして、プカプカと浮いている。

もう腐敗の空気が部屋全体に充満してるんだ。

このままじゃ、どんどん濃度が増していく!


門川君は部屋中を必死に逃げ回る。

お兄さんに近づこうにも、近づいたらあっという間に体が腐ってしまう。

それに門川君には、お兄さんを攻撃するなんて無理だ。


彼は、お兄さんは自分が殺したようなものだと思ってるだろう。

深い深い負い目がある。

そのうえ、こんな無残な姿で浮かばれずに利用されている実の兄。

それを自分の手で無碍に葬るなんて・・・。


まともな神経してたらそんな事は、とてもできっこない。


だから・・・


あたしが、お兄さんを滅する!

門川君を守らなければ!


できる事なら倒したくはない。お兄さんを救いたい。

でもそれ以上に、あたしは門川君を守りたい!

お兄さんが門川君に害をなすというなら、あたしはお兄さんを倒す!
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