幕末トリップガール~陰陽少女と新撰組~
俺は、誰にも生きることを望まれていないにも関わらず、それでも死ねない死に損ない野郎。


それをどういうわけか、この男は知っていた。

「……ねえ。君を、君が必要な人がいる世界に飛ばしてあげる」



男の言葉は、砂糖菓子のように甘ったるい。

気持ち悪い位甘ったるくて、優しくて、心地が良かった。






「俺を必要な人…?」

「ああ」頷く。



「オレの要求さえ飲んでくれれば、君をこの世界から消してあげる」





俺はきっと、ずっと欲していたんだ。
俺を必要としてくれる人を。





「……どうせればいいんだ?」

自分がこれからこの男に利用されるなんてこと、百も承知だった。

でも、利用されてもいいと思った。




それ位、このときの俺は「愛」を欲していた。




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