幸せになろう
エレーナは、宮原君の事をすごく心配しているのよ。エレーナと仲直りしてあげて」
「それは出来ない。俺を殺そうとした天上界は信用できない」
慎一は天上界への強い不信感を示す。
「でもエレーナは直接関係ないでしょう?
エレーナは、貴方を殺そうとした天使達に抵抗したっていうじゃない」
「とにかく天上界とは、もうかかわりたくない。散々俺を危険人物扱いしやがって。
エレーナと仲直りするつもりはない」
慎一は天上界との関係をかたくなに拒む。
「エレーナは、宮原君のことがすごく好きなのよ」
「どうしてそんなことが分かる?」
「エレーナの貴方に対する態度を見ていれば分かるわよ。私だって……」
そう言いかけてやめた。
「えっ」
慎一が驚いたような反応を示す。
綾香は、つい口を滑らしてしまった。そして慌てて慎一から目をそらした。
自らの発言に驚き困惑し、胸がドキドキして慎一の方をまともに見られない。
「とっ、とにかく、宮原君と天上界の間で板挟みになって一番辛いのは、エレーナなのよ。
エレーナの気持ち、少しは分かってあげて」
綾香はむきになった。
いったい、自分は何を言っているんだろう。綾香は自己嫌悪に陥った。
エレーナの親友である綾香。彼女には、エレーナの気持ちが手に取るように分かるのかもしれない。
 
 慎一は、独りで出かけた。そして、川のそばまで来た。
慎一が、流された場所だ。
川は、今にも魔の手を伸ばし、再び慎一を飲み込むがごとく勢いで流れている。
慎一が独りで考え込んでいると、そこにジェシー・クリスタルが現れた。
「慎一、ここにいたのか」
「お前、何しにきやがった?」
慎一はジェシーを警戒する。
「何しにきやがったとは、ご挨拶だな。安心しろ。お前を殺しに来たのではない」
「じゃあ、何の用だ?」
「今日は、お前に話たい事があって来た」
「お前と話す事など何も無い」
慎一はジェシーと話す気などない。むしろかかわりたくないぐらいだ。
「まあ、そう言うな」
「この間は、申し訳なかった。だが、お前を殺そうとしたのは、天上界全体の意思ではない。
一部の幹部達が、勝手に決めた事だ」
「今更……」
慎一には、ジェシーの謝罪など言い訳にしか聞こえない。
「でも、これだけは、信じて欲しい。
イザベラ・エレガンス幹部は、お前の殺害計画には、関わっていない。
幹部達が、お前を殺害する計画を話し合っていたとき、エレガンス幹部は、その場に居なかった。
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