幸せになろう
それにね、私、知っていたの。川村君が病気で、長く生きられないことを。
偶然、川村君の家族から聞いていたの。
いろいろとありがとう、サラさん」
少し時間が経過した。
「サラさん、お願いがあるの。私、川村君と少しでも長く一緒にいたい。
出来る事なら、彼の病気を治してあげてほしいの」
綾香は川村の延命を願った。しかし、
「人間の寿命を延ばすことは、天上界で禁止されているの。
歴史を大きく変えてしまうからって。
将来結婚する相手や生まれてくる子供が変わってしまったり、
政治や経済など世の中に大きく影響することもあるの。
だから人間の寿命を変えてはいけないって。
でも、ちょっとだけなら大丈夫よ。
社会的に影響力のある人だったらそういう訳にはいかないけどね」
サラが天使の羽を広げた。
大きな光が発生して綾香の願いは叶った。
「一週間だけ川村君の寿命を延ばしたわ。
この程度なら天上界からもおとがめがないと思うわ」
やがて、川村が意識を取り戻した。
「川村さん、綾香さんを連れてきたの。
綾香さんは、本当に貴方のことが好きなのよ。
だからお願い、もう綾香さんを追い出したりせず、ちゃんと彼女と向き合ってあげて。
残された時間を綾香さんと一緒に過ごしてあげて」
「うん、分かった」
サラの説得に川村は素直に応じた。
「綾香さん、今度こそ川村さんに自分の気持ちをちゃんと伝えるのよ」
「ありがとう、サラさん」
サラは、病室の外で、2人を見守った。
そして、好きな人と過ごす優しい時間だけが過ぎていった。
少しでも一緒にいられる時間を大切にするように。
綾香と川村は、毎日一緒に過ごした。
やがて、優しい時間はあっという間に過ぎ、一週間がたった。
川村は、静かに亡くなった。
「川村君、わずか一週間だったけど貴方と付き合えてよかった。
私は、貴方の彼女になれて本当に嬉しかった」
綾香は、最期まで川村に寄り添った。
そして彼の葬儀も無事済んだ。
「川村さんにちゃんと気持ちを伝えられたの?」
サラは綾香を気遣う。
「うん、いろいろと気を使ってくれてありがとうね。
川村君って宮原君に似ているんだ。考え方とか、純粋なところとか。
だから、川村君の事を好きになったのかもしれない」
「貴方、もしかして……」
綾香の告白に驚くサラ。
「私ね、実は子供の頃から宮原君の事が好きだったの。
でも宮原君にはエレーナがいるでしょ。



  
< 69 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop