春•夏•秋•冬の彼等
午後の授業は体育から始まる。

2年から晴れて同じクラスになれた彼らは、一緒に更衣室へと向かう。

雨が降っているため、女子と同じく男子もバドミントンかバスケになった。
夏休み明けの体育、しかも雨のせいでかなりの湿気がある体育館での運動はかなり疲れる。

だが、夏実と春樹にはそんなことおかまいなし。

基本的に秋人と麻冬も運動神経良いし体力あるのだから平気なのだが、あえてそんなに頑張る必要もないという。

もちろんプレーしてしまえば目立ってしまうのだが、夏実たちのように無駄に燃えたりはしないということだ。


更衣室は体育館の近場にある。

もちろん男女別。



さっさと着替えて4人は更衣室から出て体育館へと入る。


「春樹!バドでしょ?!」
「うん!」


2人は体育用具室に行ってポールやらネットやらを取り出してさっさとコートを作り始めた。


体育館は真っ二つに区切られ、北側でバドミントン、南側でバスケをやることになっている。


秋人はバスケを選んだのか、南側の壁に寄りかかりながら眠っている。

麻冬は体育館のステージ上にあるピアノを弾き始める。

小さい頃から高校に上がるまではピアノを習っていたらしい。

秋人が寝ていれば男子たちがワラワラと集まるし、麻冬がピアノを弾けば周りの人たちはうっとりする。

そして春樹と夏実がバドミントンを始めれば、観客が増えていくのだ。

2クラス合同でやるせいで、80人もの人が体育館に集まる。


バシュッと羽を打つ音が体育館に響く。


「うっし!これで追い付いたもんねっ」


夏実はピースしながらへへんと笑う。

21点真剣勝負のようだ。


「う〜〜〜…絶対絶対夏実には負けない!」
「負けた方がジュースだかんね!」


バドミントン部部長として、というより男としてのプライドのせいか。

やはり好きな人に自分の得意スポーツで負けたくないのだろう。


アグレッシブベースライナーな攻撃スタイルが春樹の持ち味なのだが、珍しく積極的になっている。

バレー部での絶対的な大エースの夏実はもちろん攻め系。

攻めと攻め同士の試合が激しいことは言うまでもない。


と、17―15で春樹が優勢なとき、体育教師がやってきた。

15分も遅れてくるとは何ともいい加減な。

まぁゆったりした性格で生徒からは好かれているから文句は言われないようだ。


教師はピーッと笛を鳴らしてみんなを整列させる。


「おーい櫻井海野〜。整列してくれー」

夏実は
「えー?!」と文句を言うが、そんな夏実に春樹は
「まぁまぁ良いじゃん、出欠のあと続きやれば」と言う。

夏実はしぶしぶ従う。

麻冬はまだ寝てる秋人を起こして整列させる。


出欠確認取ったあと、準備運動をしてからみんな再びバドミントンかバスケを始める。

もちろん春樹と夏実は試合の続きをするし、麻冬と秋人はバスケをやり始めた。


スラーッと綺麗なドリブルやシュートを見せる麻冬とは対照的に、自分勝手に豪快に攻めに行く秋人のプレー。

バスケ部よりも上手い。


よくもまぁこんなに運動神経良い人たちが集まるものだ。


自分たちが試合じゃないときは、眠そうな秋人の隣に麻冬がいて話をしている。

麻冬は厳しい口調のときもあるけど、でもどれも的を射ているし間違ってない。

見た目通り中身も可愛らしい女の子なのだ。

身だしなみにも気を使い、髪を朝巻いたり軽くメイクをしたり、どこにでもいる乙女。
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