夏の月夜と狐のいろ。
「みんな目を閉じて!」
できるだけ小さな、仲間にだけ聞こえるような声でシアンは鋭くささやいた。
理由も尋ねず、さっとノエルたちは目を伏せてくれた。
同じようにシアンもローブのフードをおさえたまま目を閉じる。
ダンッ、っという音とともに人間たちが顔をあげてそちらを向いたのが、気配でわかった。
次の瞬間あたりは静かになり、人間たちの動きがぴたりと止まった。
・・・何がおこったの?
シアンが耳をそばだてていると、すぐ傍で足音が聞こえて、前でぴたり止まる。
「もういいぞ、開けるがいい」
そんな、ハスキーで落ち着いた声。
シアンがそっと目を開くと、そこには色素の薄い茶色い髪をした中性的な容姿の青年が居た。
琥珀色の瞳が、こっちをじっと見つめている。
「誰だ?こいつらに何をした?」
シアンがぼうっとしていると、横から低い声でクロが唸るように言う。
・・・こいつら?
シアンが周りを見渡すと、そこには驚くべき光景が広がっていた。
人間たちが、目をつむる前の姿で固まっていた。