夏の月夜と狐のいろ。
―――――
無事に町に入ったシアン達は、広場の一角に設置されたイスに座っていた。
町はどこかひっそりとしていて、不穏な雰囲気だ。
人々はひそひそと何かを話したり、手を組んで宗教じみた祈りをしている人ばかりだった。
「ここはこんな町なんだ。魔術師なんかが支配しているから。」
ノエルは嫌そうに藍色の瞳を歪めて言う。
シアンは暗い表情のノエルを見つめた。
ノエルはきっと、魔術師が嫌いなんだ。
魔術師である自分も嫌いなんだ。
クロは町に入るなり「少し視察してくる」と言ってふらふらとどこかへ行ってしまった。
それで結局ここに座ってレオンに状況を説明していたところだ。
レオンはシアンたちの状況をきいて、ふむ、と唸った。
「私もきいたことがあるな、それは。最近は大きな銀狐を捕らえたとか、な。」
シアンは力なく頷く。
お父様はやっぱり捕まってしまったんだ。
どこかで逃げ出してくれていたら、なんて思っていたけど。
やっぱり教会に行って、訊くしかないのかもしれない。
でももし人間じゃないとばれたら?そう思うと足が進まなかった。
そうしてぼうっとクロの帰りを待っていたとき、突然横でノエルが立ち上がった。
どうしたの、と訊くまもなく数人の人間がノエルのまわりを取り囲んでいることに気がついた。
シアンたちには見向きもしない。
「ノエルくんだね?どこに行っていたのだい、神父様が探しておられるぞ」
そこに居たのは、恐れていた教会の人間だった。