夏の月夜と狐のいろ。
その影は、ゆっくりとこちらに近づいた。
『下がっていてください・・・』
リリィが警戒して、パリリと軽く電流をまとった。
シアンもいつでも攻撃できるようにしっぽを硬化して暗闇を睨みつけた。
けれど。
「ク、クロ・・・」
そこに居たのは、クロだった。
シアンは安心してほっとしっぽを下ろした。
同じようにリリィも身体の力をぬいて電流を消している。
「驚かせて悪い。」
クロは俯きがちにぼそりと言うと、シアンたちの横にしゃがんで教会のほうを見た。
「今は何をしてるんだ?レオンが教会に捕まりでもしたのか?」
シアンはふるふると首を振った。
「ううん。ノエルが捕まったからレオンに偵察に行ってもらってるのよ。
情報を手に入れてもらうために、捕まったの。」
シアンがそう言うと、クロがぴくりと反応した。
そして、ちらっとこちらをみた。
赤いほうの瞳が、怒りに揺れる。
けれどすぐにクロは目をそらすと、うなずいた。
「それはいいな。あいつが危険な役をするのは当たり前だな。
僕も情報がほしい・・・ラシッドのな」
クロの声は、ひくくて暗い。
いつもと同じような気もするけれど、なんだか少し様子が変だ。