夏の月夜と狐のいろ。
「ねぇクロ、どうしー・・・」
―カシャン!
シアンがそこまで言いかけたところで、教会のほうから何かが割れる音とともにすごい勢いでレオンが引き返してきた。
耳をぴたりとねかせ、低姿勢でしっぽをぴんとたてながら稲妻のようにこちらまで突っ走ってくる。
「どうしたの!?」
シアンが手を出して迎え入れると、レオンは転がるようにシアンの腕の中に飛び込んできて唸った。
『まずいことになった。私の正体がわかるようなやつが居るのだ・・・
奴は変な力をつかう・・・急いで逃げてきたがここも危険かもしれないな』
レオンのようすからして、その人物は何かやばいらしい。
レオンは肩で息をしながらくるりと向きを変えて教会の様子を伺った。
シアンとリリィもそれに習う。
けれど、クロは余裕そうに首を振った。
「別に心配ないんじゃないのか?今から逃げればいいだけの話だ。」
今から逃げる・・・?
シアンはむっとしてクロを睨んだ。
「ノエルが捕まってるのよ。助けないと逃げられないわ」
シアンが言い返すとクロは怒りに満ちた目と、呆れの目をこちらに向けてため息をつくと、不機嫌にしっぽを揺らした。
その態度にシアンはいらっとしてクロを睨んだ。
ノエルをよく思わないのは勝手だけれど、見放すのは許せない。
シアンはいらいらとしっぽを振りながら何か言おうと口を開いたが、つんつんと何かにつつかれてはっとした。
レオンの尻尾だ。
『今はとにかくノエルを助けよう。クロも協力してくれ』
レオンは冷静そうな琥珀色の瞳でシアンとクロを交互にみつめた。