夏の月夜と狐のいろ。
教会の入り口には、押し黙ったままの兵士が二人。
それ以外は誰も教会のまわりには居なくてひっそりとしている。
「ふむ…おかしいな。私がさっき偵察に行ったときと何一つ状況が変わっていない」
後ろで同じく不思議そうにレオンが首を傾げていた。
シアンは頷き、覗かせていた顔を引っ込めて路地裏でへたりこんだ。
レオンも状況がわからないし、シアンにもわからない。
もちろんリリィにもクロにもー…
そう思いかけたとき、クロが口を開いた。
「いい裏道を知っているぞ、僕ならな。
ひっそり教会に入ることのできる…な」
シアンはばっと顔をあげた。
そして、すぐに怪訝な顔をすることになる。
…なんでクロがそんなことを知っているんだろう?
問いただそうと口を開きかけたとき
シアンと同じ疑問を抱いたらしいリリィが先に口を開いた。
『なんでそんなことを?』
少し警戒したような声だ。
クロが少し前から様子がおかしいので気になっているのだろう。
その質問にクロが鼻で笑った。
「僕を疑っているのか?
僕はお前たちがぼぅっとしている間に町を下調べして
教会も調べたんだが?」
クロの表情は路地裏の闇にかくれ、見えないが
赤と青のオッドアイだけがきらりと揺れている。
けれど、シアンはぴん、と思いあたっていた。
クロは町についてすぐ別行動をとっていた。たぶんそのときだろう。
リリィも納得したのか、警戒をといた。