夏の月夜と狐のいろ。
ラシッドはそれだけ言うと、再びクロに向き直った。
「お前はもう用済みだ。狐のクローンを作り終えたら殺してやろう。
おい、シロ!地下にぶちこんどけ!」
「はい」
ラシッドがそう叫ぶとシロは無表情にこくりと頷いた。
そして人間の姿に戻ると呆然としているクロを拘束して、
部屋の入り口に消えていった。
クロは、シロを傷つけたくないのかまったく抵抗はしていなかった。
ただだらりとたれた狼の尻尾が怒りで膨らんでいただけだ。
あとを追うようにラシッドも部屋を出て行く。
暗くなった研究室に一人取り残されたシアンは
重いまぶたを閉じた。
ここから逃げないと。
クロを助けないと―・・・・
シアンはゆっくりと意識を手放した。