夏の月夜と狐のいろ。
その声は、とても懐かしい。
足音が近づいてきたが、シアンの体はさっきまでのように恐怖で震えてはいなかった。
すぐそばに、その気配を感じる。
薄暗い部屋の中でもその顔は見えた。
藍色の髪。藍色の瞳に色白の肌。
「ノエル・・・っ!」
それは、ここに居るはずのないノエルだった。
ノエルはにっこりと微笑むと耳元でささやいた。
「ごめんね。迎えに来るのが遅くなって。」
そういって優しく頭を前みたいに撫でてくれた。
シアンの瞳からぽろぽろと涙がこぼれる。
ノエルもう一度シアンの頭を撫でると、斜めがけにもったカバンからハードカバーの本を取り出した。
そして、ぱらぱらとすごい速さでめくる。
ぴたりとあるページでその手をとめると、ノエルは小さく何か囁いた。
シアンが泣きじゃくりながらそれを見ているとカチン、と鈍い音がして静かにシアンの拘束具が外れた。
「とれたよ。起きられるか?」
シアンは驚いて泣くのをやめてきょとんとした。
ノエルは何をしたの?
シアンがじっとしているのを
ノエルはシアンが起きられないと勘違いしたらしい。
確かに実際に体中が痛くて、傷だらけで起きられる状況ではなかった。
ノエルはシアンの傷をみて、ひどく悲しそうな顔をした。
藍色の瞳が小さく揺れる。
「ごめん。俺が弱いからなかなか助けに来てあげられなくて・・・。
痛い思い、いっぱいさせちゃったな」