夏の月夜と狐のいろ。
ノエルは、そう言って軽く抱きしめてくれた。
あたたかくて、心地いい。
「ありがとう・・・来てくれて。私は大丈夫」
シアンはすがりつくようにノエルの腕を抱きしめた。
ノエルと森で過ごした時間はとても短かった。
だけど、シアンは優しいノエルが大好きだった。
そして、ノエルがこの怖い場所から助け出してくれると思うと、余計にノエルが好きになった。
しばらくそうしていたが、その幸せな時間は向こうから鳴り響く足音に邪魔された。
シアンの獣のものである耳は、遠くの音も察知する。
シアンはぶわっと尻尾をふくらませた。
怖い―・・・この足音は、ラシッドだ!
ノエルがそれに気づいて不審な顔をする。
「どうしたの、シアン」
シアンは震えながらノエルにしがみついて答えた。
「・・・来る、よ・・・はやく、はやく逃げなきゃ」
唇がわなわな震えてうまく話せない。
けれど、ノエルはそれだけで状況がわかったらしい。
「大丈夫。今度は絶対にシアンのこと、守るから。」
そう言うとノエルはシアンを横抱きにして勢いよく走り出した。
―視界にちらっと、自分のクローンが入った。