夏の月夜と狐のいろ。
一瞬、赤い瞳が見えた気がした―・・・
確認する暇もなくノエルは研究室から走り去った。
横抱きにされながら、シアンははっとする。
クロが地下に閉じ込められたままだ!
「ノエル、待って!お願い」
シアンはとんとんとノエルの胸をたたいた。
ノエルが不思議そうにこっちを見る。
「どうしたの」
シアンは地下へ続く階段を指差して必死に言った。
「クロが―・・・クローンにされた、友達が地下に閉じ込められてるの!
助けてあげないと殺されちゃうわ!」
ノエルの目が、一瞬戸惑ったように動く。
クロを助けに行ったら、リスクが高くなるのはわかっているけど。
クロを見殺しにすることはできなかった。
シアンは、必死にノエルのほうをみつめた。
ノエルは一度目をつむると、決意したようにすぐ開いた。
「わかった。シアンの友達も俺が助けるよ」
ノエルはシアンを抱きかかえたまま、くるりと地下のほうへ方向転換した。