オレンジどうろ




俺は松本スミレの隣にいた三上さんに声をかけた。どうやら松本スミレは自販機に向かったらしい。

急いで自販機の方へ向かう。

あの松本スミレは小野スミレと被る。顔色が悪い松本スミレを見ると、小野スミレが苦しんでいるように見えるんだ。


だから、全速力で松本スミレの後を追った。


俺の嫌な予感は見事当たっていて、男にじりじり、と詰め寄られていた。

ぺたり、と座り込んで息は荒く、体は震えていた。

荒い呼吸の中、松本スミレは何かを呟いていた。

『平田くん...平田くん...』


すーちゃんが俺を呼んでいた。

すーちゃん。

松本スミレと小野スミレが別人なんて知ってる。

小野スミレ以外生涯好きにならない。

でも、松本スミレにもすーちゃんと呼びたくなるんだよ。

すーちゃんは許してくれるよね?



すーちゃんに駆け寄り、すーちゃんの肩を包み込む。


「大丈夫だよすーちゃん。俺がいるからね、怖くないよ。大丈夫だからね」

よしよし、と背中をさする。

「平田くん...」

俺の名を呼ぶと同時にすーちゃんは意識を手放した。

「...おい」

俺はごめんね、と一言すーちゃんに向かっていい、地面に優しく寝かした。

俺の前にいる男はジャージの色からして先輩だ。

だが、俺には関係ないことだ。

は?と不機嫌そうに返事する先輩に苛立ちながら言葉を続ける。

「すーちゃんに何したの」

怒りを抑えつつ、なるべく丁寧に言った。

「知るか。ちょっと可愛いから遊んでやろうとしただけだよ」

ニヤニヤ、と笑いながら先輩は言った。

あぁ、こいつには言葉が通じないな。

そう判断して、俺は容赦なく先輩を殴った。
強気だったくせに少し殴っただけで気絶してしまった。まぁ、俺は知ーらない。





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