オレンジどうろ




「この子は隠すのが上手だから、キミが知らないのもしょうがないよ。病人として扱われるのが嫌なんだよ。でも、キミは優しい子みたいだからね、話すよ」


すーちゃんを撫でながらすーちゃんのお父さんは病気のことを話した。


「病気にかかったのは10年前。ちょっとした事件があってね、それが病気を引き起こしたのかもしれない。」


俺は真剣な顔で聞いた。すーちゃんのことを知りたかった。

「病名は...?」

聞いてみると、俺も知ってる病名だった。

「パニック障害。キミも知ってるかもしれないね。突然何の理由もなく激しい不安とともに胸がドキドキする、しめつけられる、息ができないとか、主に心臓を中心とした自律神経症状が複数重なって起こるんだ。自分は死んでしまうかもしれない、とかそういう不安は恐怖に変わって目眩、体中が痺れたりする病気だよ。まぁ、命にかかわる病気じゃないけどね」



だからか。


あの時呼吸困難みたいになってたのも、すごく震えてたのも。悪い方に考え過ぎてこれから自分がどうなってしまうか不安で、怖かったんだ。


いつも明るくみんなに優しく振舞ってたすーちゃんは、あの小さな体に全てを押さえ込んでいたんだ。


彼女は小野スミレと瓜二つ。
でも、性格は全然違うらしい。

小野スミレは、我慢が苦手で少し我が儘だけど、どんな子とも仲良くて...。

あぁ、どんな子とも仲良くては、このスミレも同じか。




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