オレンジどうろ




今日分かった。

平田くんが何かに似てるって思って今日ずっと考えててたんだ。

本当に今日初めてこのクラスに来たのか?と思うほど馴染んでいる。

その秘訣はきっと...


「すーちゃんすーちゃん、早く案内してよ!」

「今帰る準備してるんだから待ってよ!」

「...ごめんなさい...」


この犬のように感情全てが全身に表れる。その素直で明るいところだろうな。


本当に犬に似てる。

忠犬ハチ公のようだよ、本当...。


今だって待ってと言ったら、イスに座ってワクワクしながら私を待っている。


「あのさ...私は平田くんの友達の“すーちゃん”じゃないんだからすーちゃんって呼ばないでよ」


そう、なぜか私が“すーちゃん”じゃないと分かってるのに私を“すーちゃん”と呼ぶのだ。


「だって、キミだってスミレっていうんでしょ?じゃあ、すーちゃんじゃない!」


ニカー、と笑う平田くんを見てると私まで胸がホカホカする。

不思議だ、考えているとそれに、と平田くんは言葉を続けた。

「すーちゃんだって、キミをすーちゃんと呼ぶことを許してくれると思うんだ」


そう言った平田くんは、今日見せたあらゆる表情にも当てはまらない、“すーちゃん”への“愛しい”という想いが平田くんから溢れていた。


あぁ、すごく優しそうな顔。


“すーちゃん”って子は、こんなに愛されて幸せ者だな、と思う気持ちとさっき感じていた胸の暖かさじゃなく、チクリという痛みを感じた。



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