赤いスイートピー
「待たせて悪いな。」
そう言ったきり、卓弥は話をなかなか切り出そうとしなかった。
チエミをちらっと見たり、窓の外を見た
りして落ち着かない。
「用がないなら、帰るけど。」
チエミがいうと、それをきっかけにして
卓弥が口を開いた。
「お前、土曜日、恋人岬行ったべ?」
えっ!とチエミはさけびそうになった。
先週末、柏田との西伊豆旅行で立ち寄った場所だ。
(どうしよう…見られていた…)
動揺を隠せないチエミに卓弥は続けて言った。
「俺は家族でいったんだけど。
泊まったのは西伊豆温泉ホテル」
それはチエミたちが泊まったホテルだった。
「すげえ偶然だね。」
そう言って顔を上げた卓弥は悲しそうだった。
チエミは開き直り、卓弥を上目遣いにキッと睨んだ。
「佐山くんには関係ない!」
不貞腐れたように言い、立ち去ろうとすると、チエミの腕を卓弥が掴んだ。
その手の力の強さにチエミは全身の力が萎えるのを感じた。
「関係ある!」
卓弥が怒ったような顔付きで言った。
「お前、こんなのばれたら相当ヤバイのわかんないのかよ。柏田は懲戒免職、お前退学だぜ。」
卓弥はチエミの腕を掴んだままだ。
「痛いよ…」
チエミが眉を歪めて言って、卓弥はやっと手を放した。
「柏田も馬鹿だな、生徒に手をだすなんて。」
卓弥は吐き捨てるように言った。
「…私も先生も本気だもん。」
「あほか。いつから付き合っているのか知らねえけど、あんな奴、取っ替え引っ替えやってるに決まってる。」
「変な事言うのやめて!」
チエミが叫ぶように言うと、卓弥も強い
口調で言いかけた。
「俺はな、お前のこと…。」
いつのまにか、チエミの目からは涙がこぼれ落ちていた。
それを見た卓弥は口をつぐんだ。
そして、少し考え込むと、泣いているチエミの肩にポンと右手を置いた。
「そんなにあいつの事、マジで好きなら、逆に俺と付き合ってるふりしろよ。
そしたら、世間の目、誤魔化せるんじゃない?」
佐山卓弥は真顔で言った。
そう言ったきり、卓弥は話をなかなか切り出そうとしなかった。
チエミをちらっと見たり、窓の外を見た
りして落ち着かない。
「用がないなら、帰るけど。」
チエミがいうと、それをきっかけにして
卓弥が口を開いた。
「お前、土曜日、恋人岬行ったべ?」
えっ!とチエミはさけびそうになった。
先週末、柏田との西伊豆旅行で立ち寄った場所だ。
(どうしよう…見られていた…)
動揺を隠せないチエミに卓弥は続けて言った。
「俺は家族でいったんだけど。
泊まったのは西伊豆温泉ホテル」
それはチエミたちが泊まったホテルだった。
「すげえ偶然だね。」
そう言って顔を上げた卓弥は悲しそうだった。
チエミは開き直り、卓弥を上目遣いにキッと睨んだ。
「佐山くんには関係ない!」
不貞腐れたように言い、立ち去ろうとすると、チエミの腕を卓弥が掴んだ。
その手の力の強さにチエミは全身の力が萎えるのを感じた。
「関係ある!」
卓弥が怒ったような顔付きで言った。
「お前、こんなのばれたら相当ヤバイのわかんないのかよ。柏田は懲戒免職、お前退学だぜ。」
卓弥はチエミの腕を掴んだままだ。
「痛いよ…」
チエミが眉を歪めて言って、卓弥はやっと手を放した。
「柏田も馬鹿だな、生徒に手をだすなんて。」
卓弥は吐き捨てるように言った。
「…私も先生も本気だもん。」
「あほか。いつから付き合っているのか知らねえけど、あんな奴、取っ替え引っ替えやってるに決まってる。」
「変な事言うのやめて!」
チエミが叫ぶように言うと、卓弥も強い
口調で言いかけた。
「俺はな、お前のこと…。」
いつのまにか、チエミの目からは涙がこぼれ落ちていた。
それを見た卓弥は口をつぐんだ。
そして、少し考え込むと、泣いているチエミの肩にポンと右手を置いた。
「そんなにあいつの事、マジで好きなら、逆に俺と付き合ってるふりしろよ。
そしたら、世間の目、誤魔化せるんじゃない?」
佐山卓弥は真顔で言った。