猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「それで?」
「あの、ね……」
美桜は思い出してまた泣き出しそうになるのを必死に堪えて、絢士とのやり取りを話して聞かせた。
途中、絢士のお母様が戸籍上は父親だと話した時は、流石の日向も口をあんぐりさせて驚いた。
「麻生美桜の夫とはして生きられないか……、痛いとこ突かれたわね」
「私が甘かったのよ、愛していれば何でも乗り越えられるって思っていたけれど、実際の所、私が乗り越えるものなんてなかったの。ハードルは彼の前にだけ並んでいたんだわ」
一頻り泣いて日向に打ち明けたら、現実が見えて悲しみが少し和らいだ。
まだ別れを受け入れられないけど、
今日から少しずつ前に進んでいくしかない。
「聞いてくれてありがとう、ひな」
日向はうーんと唸った。
確かに、どこに行ってもどんな仕事をしてもASO の名前が出てくるだろうし、その度に美桜の夫だと言われるだろう。
何かを自分の力で成し遂げたとしても、
そこにASOが必ずついてくる。
正直、榊 絢士は美桜を受け入れて上手く利用する方かと思っていたから、そんな正論を言われたら返す言葉が見つからない。
悔しいけれど、二人を元に戻す方法はないと諦めるしかないのかな……
はあーと深いため息が日向の口からこぼれる。
「それにしても母親が父親ってすごいわね」
「その事なんだけど……」
「なに?どうしたの?」
「えっとね……ひな、あのね……これは私の勝手な推理だから……その、なんていうか……」
さっきと違って、もじもじと言い淀む美桜に日向はしびれを切らした。
「あーーもう!焦れったいわね!」
美桜の頬を掴むとぐにぐにと引っ張る。
「やっ、いひゃい!ちょっと、やめひぇよ」
「勿体ぶらないでさっさと言いなさいって」
頬を擦りながら美桜はまだ言い淀んだ。
「でもひなが傷つく事になるかも……」
「あら、そう。じゃあ少し待って」
日向は一分ほど瞳を閉じてから、ふぅーと深呼吸した。