猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
ー翌日ー
絢士はシャノン空港に着くとそこから列車に乗りリムリックへ降り立った。
この街にも冒険心をくすぐる古城や博物館があり、誘惑に逆らえず、絢士はくまなく観光して回ってからバスに乗ってアデアと言う村へ向かった。
アデアは最も綺麗な村として観光客に人気があるとガイドブックに書かれているだけあって、人や車が想像より多くて驚いた。
まるでお伽の世界のような可愛らしい家々の庭には色とりどりの花が咲き、ゲームの世界で見たような長閑な広い草原に石造りの廃墟のような建物が見える。
村の中心ではマーケットが開かれて、自作の食料品の他に手作りの雑貨類も売られていた。
ふと、美桜の笑顔が瞼に浮かんだ。
この旅でもう何度目か数え切れないほど、彼女を思い出している。
ここへ来たら大変だっただろうな
『宝探しをしましょう!』
なんて言って、都心の大きな公園で開かれた蚤の市をデートしたのはついこの間の事だった。
古いレコードを見たりブリキのオモチャを見つけたりして楽しんでいたが、アンティークを愛する彼女は気づくと同じエリアに一時間はいるなんて事になっていた。
俺はここでも『頼むから、もう帰ろう』と懇願していただろうか?
ありもしない事を空想して苦笑いする。
それでもやっぱり彼女と来たかったと思う自分が情けなくなった。
「今さらどうにも出来ないさ……」
絢士は気を取り直してメモを見た。
この先が書かれている番地だ。
ゆっくり歩きながらいくつかのB&Bを見ていると、その建物が見つかった。
いや、瞳に飛び込んできた。
まるで絵の中から飛び出したような、可愛らしい石造りの家……そう、所有する秋の猫の絵と同じ家が
絢士は思いきって、扉を叩いた。