RUBY EYE
そう言うと、美鶴は立ち上がった。
ピンと伸びた背筋と、品を感じる足運び。
それに、美鶴はとても綺麗な人だと思った。
「いらっしゃい」
「・・・・・・はい」
書斎らしい部屋を出て、月野は廊下を歩きながら、中庭に目が行く。
(バラ園だわ。綺麗・・・・・・)
赤、ピンク、白、黄色。
いろんな薔薇が咲き誇る中庭を、月野は楽しげに眺める。
「慧は元気かしら?」
「あ、はい。元気です」
2階へ行く階段を上がる途中、美鶴が不意に、足を止めた。
慧とは、月野の父親のことだ。
「そう。元気ならばいいわ。・・・・・・慧から、何か聞いている?」
「何か? あ、祖母によろしく、と言っていました」
「・・・・・・そう」
美鶴は再び背を向けて、階段を上がる。
(さっきの人もそうだけど、話しかけづらい人だなぁ)