RUBY EYE
何度かノックをすると、中から女性の声が返ってきた。
「入りなさい」
青年が扉を開け、月野の背を軽く押す。
「あなたは、行かないの?」
「・・・・・・また後でな」
意味深な台詞を囁くと、青年は月野を部屋に入れて、扉を静かに閉めた。
赤い絨毯と、壁一面を覆い隠す、背の高い本棚。
部屋は暖かく、良い香りが鼻腔を通り抜ける。
「早かったわね、月野」
「あ、はい」
目の前には、夏の新緑を思わせる色合いの着物を着こなす、初老の女性。
「あなたの祖母、になるのかしら。音無 美鶴よ」
「1年、お世話になります」
月野は、礼儀正しく頭を下げる。
祖母と会うのは、これが初めて。
感動的な出会いを求めていたわけじゃないけど、あまり歓迎されているようには思えない。
「あなたの部屋へ、案内するわ」