RUBY EYE
「今夜は、もう休むわ」
「送りましょうか?」
十夜が手を差し出すが、美鶴は小さく首を振る。
「あなたも早めに休みなさい」
「はい」
美鶴が見えなくなり、十夜は月野の部屋を見上げた。
何も知らない無垢な子。
それは、幸福の塊だ。
自分が守らねばならぬ、大切なお姫様。
「・・・・・・おやすみ」
囁くように呟くと、十夜はゆっくりと、自分の部屋へ戻るため、歩きだした。
4月1日 曇り
今日は、新学期―――。
日記を閉じて、月野は鏡の前に立つ。
新しい制服は、とてもシックで、白いシャツに、赤いリボン、黒のスカート。
でも、こういうシンプルな服、月野は嫌いじゃない。
「おい、朝ご飯」
「あ、はい」
ノックも無しに顔をだす十夜にも、少し慣れた。
こっちに来てから、荷解きが忙しくて、月野はどこにも出かけなかった。