RUBY EYE

十夜は形ばかりの返答をする。


「手が痛いのだけど・・・・・・」

「手?」


ようやく立ち止まる気になった十夜は、立ち止まって掴んだ月野の手を見る。

手首が赤くなっている。


「さっき、浦部先生にも掴まれたから。みんな力強すぎよ」


浦部もそうだが、十夜も力が強い。

細身の体なのに、何故こんなにも力が強いのか。


赤くなった手首をさすりながら、月野はため息を漏らす。


「保健室に行った方がいいかもしれないわ」

「ダメだ」

「ダメって・・・・・・」


月野の手首は白いから、赤くなると少し目立ってしまう。


「ひとりで保健室―――浦部と会うな。いいな?」

「でも、保健医だし・・・・・・」

「いいな?」

「? ・・・・・・わかった」


そんなに強く言わなくてもいいだろうに。

納得できない気持ちのまま、月野は赤くなった手首をさする。


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