RUBY EYE
「冷やしてやる」
そう言うと、十夜はポケットからハンカチを取り出し、近くの水道で濡らしはじめた。
「手首を出せ」
「自分でやるわ」
「いいから言う通りにしろ」
「・・・・・・」
おずおずと手首を差し出すと、口調とは裏腹に、優しい手つきで手首に濡れたハンカチを押し当てた。
冷たいハンカチが、気持ち良い。
(優しいのか、偉そうなのか・・・・・・。変な人ばっかり)
十夜も、今朝会った愛理も、さっき会った鷹斗も、浦部も。
みんな、月野からすると“変な人”だ。
「赤みが引くまで、こうしてろ」
「あ、うん。ありがとう」
月野がお礼を言うと、十夜は微笑みを返してくれた。
「・・・・・・」
「なんだよ、その顔は」
「いや、綾織くんも笑うんだ、と思って」
いつものクールな表情も綺麗で見とれるけど、笑顔はより一層、素敵に見える。