RUBY EYE

美鶴の言葉に、十夜は何も返せなかった。

どう答えるのが正解なのか、わからなかったのかもしれない。


「おやすみなさい、十夜」

「はい」


風に吹かれて、薔薇の香りが強くなる。

この香りは嫌いじゃないが、油断すると理性を奪われそうだ。


「運命を変える、か」


もし、自分の運命を彼女が変えるのだとしたら、彼女の運命を変えるのは誰なのだろう?

いや、彼女の運命は、誰よりも早く廻りだし、誰よりも複雑な軌跡を描くのだろう。

運命を変える者は、等しく運命に翻弄されるものだ。


「俺も休もう」


月明かりに照らされながら、十夜はバラ園を後にした。










学校に通いだして3日。

未だに友達はできていない。

この現状に、月野はひどく落胆していた。


(自分から話しかければいいんだろうけど・・・・・・)


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