RUBY EYE
ううん、十夜は悪くない。
そう言いたかったけど、漏れるのは押し殺した泣き声ばかりだった。
「・・・・・・ぐすっ」
鼻をすすり、涙がもう出なくなった頃。
「いい雰囲気のとこ、邪魔するよ」
「鷹斗」
月野の髪を撫でていた十夜の手が止まる。
「あ、ごめんなさいっ」
気づいた月野が、慌てて十夜から離れる。
「なんだ、その態度は」
「えっと・・・・・・」
不満顔の十夜を直視できなくて、月野は顔を逸らす。
「話してもいいか?」
「ん? あぁ」
十夜の視線が、自分から鷹斗に移り、ひとまず月野は落ち着く。
男の人に抱きしめてもらったのは初めてで。
父親とは違う匂いとか胸板に、心臓がドキドキとうるさい。
「とりあえず、判断は綾織に任せるってさ」
「そうか、わかった」