RUBY EYE

否定してほしかった。

血を吸うだなんて、そんなの本当に―――人じゃない。


「俺が怖いか?」

「・・・・・・ううん、怖くない」


少なくとも、今は。

でも、十夜も浦部のようになる時があるのだろうか?

椿に聞かれた時には、考えもしなかったのに。


「おやすみ、月野」

「おやすみなさい・・・・・・」


扉は閉じられ、月野は頭を振る。

守ると言ってくれた人に、こんなの失礼だ。

月野は俯いたまま、自分の部屋へと足を向けた。





バスルームは、シャンプーと石鹸の香りで満ちていた。

薔薇の香りがするシャンプーや石鹸は、椿が月野のために、と用意したものだ。


(月野の匂いがする)


シャンプーや石鹸に紛れて、月野の香りが、バスルームには溢れていた。

それは、甘く香って十夜の体を震わせる。


ダンピールだからなのか。

それとも、月野だからなのか。


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