RUBY EYE
彼女の匂いは、薔薇に似ている。
香って、理性を奪おうとする。
「今夜は、シャワーで済まそう」
早くバスルームから出てしまおう。
十夜は匂いを掻き消すように、自分のシャンプーを泡立てた。
放課後の教室で、月野はパラパラとページをめくる。
今は月野ひとりで、先生に呼ばれた十夜を待っている。
【いいか? 絶対に教室から出るな。もし何か感じたら、迷わず俺を呼べ。いいな?】
そう言って、十夜は教室を出ていった。
(私は子供か)
まぁでも、不本意だが勝手に行動して襲われかけた前科があるし。
素直に従っておこう。
「・・・・・・?」
視線を感じて、月野は顔を上げる。
「誰かいるの?」
聞いてみても、返事はない。
月野は立ち上がり、辺りを見回す。
誰もいない。
いないはずなのに、視線を感じる。