RUBY EYE
男の子の名前なんて、呼んだことない。
戸惑う月野に、鷹斗が面白がって距離を詰める。
「お互い名前で呼び合った方が、親密になれると思うよ?」
「私は、このくらいの距離感で十分だと思うのだけど・・・・・・」
手を伸ばしてギリギリ届く、今の距離。
「そうだな。俺も、このぐらいが妥当だと思う」
「保護者様のご帰還だ」
からかうような鷹斗の言葉に、十夜は眉間に皺を寄せる。
「鷹斗、お前は―――」
「見られてるぜ」
瞬間、鷹斗が窓の外に鋭い視線を向けた。
その視線の先を、十夜も追う。
「気をつけろよ、十夜」
「言われるまでもない。月野、帰るぞ」
教室をさっさと出ていく十夜を、月野が慌てて追いかける。
「何の話?」
「お前が気にするような話じゃねぇよ、愛理」
笑いながら、鷹斗は廊下に出る。