RUBY EYE
「何それ。私、帰る」
機嫌を悪くした愛理は、早足で廊下を歩いていく。
その背を見送り、鷹斗は赤く染まる校内を見回した。
「いつ見ても、不気味だな」
そういえば、こういう時間帯のことを逢魔時と言うらしい。
妖怪や化け物が、活動を始める時間。
確かに、放課後の誰もいない校内は、人間の世界とは隔離された、別の世界に見える。
「っと、デートに遅れる」
鷹斗は変わらぬ笑みを浮かべて、校内を後にした。
月明かりに照らされた中庭で、月野は携帯電話を翳している。
父親に電話したのに、出なかった。
「はぁ・・・・・・」
「冷えますよ、月野」
穏やかな声に振り返れば、美鶴がいた。
もう夜も遅いのに、きちんと着物を着て、隙が見えない。
「あ、ごめんなさい」
「慧に電話でも?」
お見通し、らしい。