RUBY EYE
月野は携帯を握り締めて、頷く。
「おばあちゃんは、どうして死にたいの?」
祖母と孫の会話にしては異質すぎるが、他に話題など浮かばない。
「あの人だけが、私の安らぎで、唯一の拠り所だった」
石畳を、優雅な足取りで美鶴は歩む。
月野はつかず離れずの距離で、祖母の後に続く。
「生まれた時からずっと、音無の当主として相応しくあるため、厳しく育てられてきた」
その賜物が、今の凜とした立ち姿の彼女なのだろう。
「誰にも弱みを見せず、当主として生きてきた。でも、あの人はそんな私の―――」
立ち止まった美鶴は、泣きそうな顔をしていた。
本当は泣きたいんだ。
でも、泣けないのは当主だから?
当主の重要性も辛さも、月野にはわからない。
「あの人が居なくなった世界が、こんなにも色褪せて見えるだなんて、知りもしなかったわ」