エレーナ再びそれぞれの想い
中沼が慌てて写真たてを伏せようとしたが遅かった。
シュウは写真を見るなり表情が変わり、
「かっ母さん!」
シュウが発する強風が、表面の乾いた土砂を巻き上げ、砂漠の砂嵐の様になって吹き荒れた。
台風並みのポルターガイストは、土砂、がれき何でも巻きあげた。
このままではまずい。
天使達は中沼を連れ、離れた所へ瞬間移動した。
「なぜ写真を見ただけであんなふうに。シュウ君に一体何があったんですか?」
エレーナが中沼に聞いた。
「あれは、シュウ様の本当の母親の写真なんです」
中沼が静かに答えた。
シュウが幼少の頃に、津波に巻き込まれて行方不明となり、数年後再会したが、
記憶喪失でシュウの事を思いだせぬまま、再婚していた産み母。
自分を本当の親に代わって育ててくれた、祖母、郁乃、母、結衣ではなく、実の息子を忘れて遠くへ行ってしまった、産みの親の写真が出て来たのだった。
実母の写真はシュウの時間を辛い過去へと引き戻した。
それは、あまりにも非情過ぎた。
「わあぁぁぁーーー!」
シュウは泥とがれきを吹上げながら泣き続けた。
「母さーん!」
エレーナ達が危惧していた、最悪の事態とは、郁乃と結衣が遺体で見つかる事。
しかし、それをはるかに上回る想定外の事態が起きた。
シュウの育ての親が見つからぬ状況で、産みの親の写真が出て来たのだ。
エレーナ達の想定外はともかく、少なくても、シュウにとっては、想定外をはるかに超えた超想定外であった事には間違いない。
シュウの心は徹底的にぶちのめされた。
「シュウ君の気持ちを静めなくては」
エレーナはシュウが発するポルターガイストの嵐の中に飛び込もうとするが、
強風でうまく飛べず、近づけない。
今度は、瞬間移動でシュウの背後につき、翼でシュウを抱きしめようとした。
この間のように、一時的に眠らせようというのだ。
だが、エレーナの翼がポルターガイストの強風を受け、彼女は吹き飛ばされた。
「こうなったら、どうすればいいの」
さやかもあれこれシュウを静める方法を考えた。
一つだけ方法があった。
それは、シュウから産みの母の辛い記憶を消してしまうというものだ。
だが、エレーナもさやかもこの方法にはひどく躊躇した。
本当にそんな事をしていいのか?
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