エレーナ再びそれぞれの想い
なのに、どうして、こんな連中のためにそこまで肩入れするの!」
「嫌ァァァーーー」
直後にエレーナの悲痛な叫びが学校中に響き渡った。
だが、シュウの反応は意外だった。
「やはり、そうだったんですか……」
「やはりって?」
マリアンヌが聞き返すと、
「実は、土砂崩れが起きる前、祖母と母がその事について話しているのを偶然聞いちゃ
ったんです。
僕の死因に疑いを持った祖母と母は、警察に捜査を依頼、その後、土砂崩れで行方不明
になったんです」
シュウは静かに話す。
エレーナは、泣き崩れた。さやかと、中沼は、そっとエレーナの肩を抱きかかえた。
「なぜ、医療ミスの可能性を私達に黙っていたの?」
さやかは、シュウを問いただした。
「天上界が大変な時に、これ以上皆さんに心配掛けたくなかったんです」
シュウがそう言うことは、さやかもエレーナもある程度分かっていた。
シュウとはそういう奴だ。
だが、シュウ自身はひどく動揺していた。
一見平静を装っているが、身が震え、表情は強張り、大きく見開かれた瞳はゆれていた

シュウの動揺に気づいたマリアンヌ。
もし、シュウが自らの死因を、医療ミスである可能性を最初から知っていたのであれば
、これほど動揺するだろうか……
マリアンヌは、不自然だと感じた。
シュウの様子を見ていたマリアンヌは、踏み込んだ問い詰めをした。
「シュウ、まだ私達に嘘をついているでしょう?
貴方、さっき、医療ミスの疑いは、祖母と母の会話を聞いたからと言ったよね。
でもそれって嘘ね。本当は、医療事故による死因は今初めて聞かされた。
エレーナ達に心配掛けたくないからと、とっさに思いついたうそでしょ?」
下を向き黙り込むシュウ。
「そうなの? シュウ」
さやかも問いただした。
「どうして、それを……」
シュウは、恐る々聞いた。
「医療ミスの可能性を最初から知っていたにしては、動揺し過ぎじゃない?
初めて聞かされたって言っているみたいよ」
シュウは、祖母や母が話しているのを聞いたと言った。
しかしそれは、エレーナ達を心配させないためにとっさについたうそ。
マリアンヌは、シュウの表情やしぐさなどから、嘘を見抜いていたのだった。
「なぜ、そこまでするの?
こいつらは、貴方を幸せに出来ないどころか、かえって不幸にしたじゃないの」
マリアンヌはシュウの気持ちが理解出来ない。
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