泣きたくなるような声
「だから電話してきたのか」
携帯電話をあてている耳に、低い声が聞こえる。
俊一に電話しよう、と思い立ったのはよかった。
だが、私は電話をかけるというのが苦手だ。
他大学に通っている俊一について、私は普段彼がどういうスケジュールなのか知らない。
だから、この時間どうしているかわからない。
友人と一緒にいるなら、電話は迷惑になる。あれこれ考えてしまう。
これを俊一は
「彼女なんだから、そんなの気にするな」
と笑っていたが、そういう問題じゃないのだ。