その夜は二月半ば過ぎで、少し寒気がする程度だった。


 だが、もうすぐ春である。


 気持ちを入れ替えるには一番いいと思った。


 まあ、別に気合を入れるとかじゃなくて、普通に職を探すのだが……。


 何度蹴られても、探しに行くつもりでいる。


 翌日の朝から上下ともスーツを着て、品川の自宅マンションを出、区内のハローワークに足を運んだ。


 とにかく納得がいくまで、やるつもりでいる。


 きついことに変わりはなかったのだが……。


 ずっと誰かから付けられているような気がするのは、考え過ぎだろうか……?


 藤井から暇をもらって数日間、ずっとそんな気がしていたのである。


 何者かが付け回していることが気になっていた。


 誰かは分からない。
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