絶対にみちゃダメ!
「それより……したいな」

 雅がうしろからあたしの腰に手を当ててくる。


 なにいっとんじゃ、アンタはー!!!



「なんで!この前、もうしないって言ったじゃん」

 あたしは心底嫌そうな顔をしながら逃げ出そうとした。

 雅が逃がさないよというように、身体に腕を回してくる。

「だって、小町が可愛いから。ドレス凄く似合うよ」

 耳元でそんな風に言われたら、ドキドキしてしまう。

 コンタクトの入った茶色の瞳がキラキラ光を反射して、物憂げにあたしの方を見つめていた。


 この、天然フェロモン王子が!


「冗談でしょ。まだお化粧も髪もしなきゃいけないんだから。遅刻しちゃうよ」

 鏡の中に写るあたしは、スッピンだし、髪も長くたらしたままだ。

 ドレスに合わせるには、髪を巻いてアップにしなきゃいけないとおもう。

 それが正装ってモノだろう。





 あたしはそっけなく腰の雅の手をペシンとはたいて引き剥がして、ドレッサーの方へ向かった。

 ホットカーラーの電源を入れてあったんだ。

 そろそろ巻き始めないと。



「なんで?あれから全然させてくれない」

 雅は不服そうな顔をしながらついてくる。

「当たり前でしょ!あたしたちは恋人でもなんでもないの。だからそういうことはしないの!以上!」

 あたしはビシッと人差し指を雅の鼻先に突きつけた。


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