大嫌いなアイツ
「―――へぇ…そうなんだ?ほんとに?」
「…………うん。キライ、なんて思ってない」
ふぅん…と言いながら、吉野が私を見下ろす。
ていうか、それを言うなら。
「………吉野くんこそ。私のことキライなんじゃないの?」
フワッと心地いい風が舞う。
お互いの髪の毛が揺れる。
クッ、と吉野が口元を歪めて笑った。
「…なんで。俺が岡部さんを嫌う理由なんて、それこそないし。」
「…へ?」
嫌われてない…?
じゃあ、他の人との態度の違いとか、私と話してる時のイライラした態度は何なのよ?
吉野から目を離して、目を泳がせる。
考えるけど、吉野の私に対する態度は嫌ってる態度にしか思えない。
……やっぱり不可解すぎる。
理系と文系じゃ、脳の構造が違うのかもしれないな…。
――――ツン、と髪の毛が引っ張られる感覚を覚えた。
「!え、何…?」
引っ張られた方を見ると、吉野が私の髪の毛を一房掴んでいた。
吉野は軽く微笑んでる。
「…やっと。」
「へ?―――っ!」
…目を疑った。
だって。
吉野が、私の髪の毛に唇を落としたから。
…何、してるの?