想 sougetu 月
「部屋探し?」
「ん」

 大学の食堂で休憩中、シイナが住宅情報を持っている私に気づいてどうしたのかと聞いてきた。
 事情を簡潔に話し、部屋を探していることを告げる。

「やめといたら?」
「どうして?」
「あの斎君がそんなこと許すはずないでしょ。怒らせるだけだよ。あの男は月子にだけは容赦ないしね」

 同じクラスにはなったことがないものの、シイナは唯一、斎を知っている中学の時からの友人だ。
 意外と斎のことをよくわかっているシイナの言葉に苦笑がもれる。

 そうなのだ。
 誰にでも優しいフェミニストの斎だけど、私には容赦がない。

 よく言って過保護。
 悪く言えば支配的。

 そんな言葉が似合いそうなほど斎は私に干渉してくる。

「最近、斎には彼女みたいな人がいるみたいだから、いずれ対象がその彼女に変わると思うし……」
「嘘っ! あの斎君に彼女が出来たの?」
「そうみたい。デートしてるとこ見たっておば様から聞いたもん」

 私が家を出る決心をしたのはこの時からだ。

 
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