想 sougetu 月
 いつもの穏やかな日曜日。
 珍しく朝からいない斎の事を聞いた時、おば様が前の週、ショッピングモールで斎が女の子と親密そうな態度で一緒にいるのを見かけたらしい。


「すっごい可愛い子だったの! かなり親密そうでイイ感じだったわ。あれは彼女か……もうすぐ彼女になるって感じ。ま、うちの息子なら振られるなんてことはありえないから彼女と言ってもいいのかもしれないわね~。残念、おばさん、月子ちゃんにお嫁に来て欲しかったんだけどなぁ~」


 経済新聞片手に、とても残念そうに言われて痛む胸を無視して微笑んだ。

 お嫁に来て欲しいと言ってくれているが冗談なのはわかっている。
 近親相姦は犯罪なのだから……。

 誰にも知られてはいけない想い。

 苦痛を感じようとも、もう表情に出ることはない。
 何度も苦痛を味わって、いつの間にか苦痛に慣れてしまった。

 私は目を閉じて、苦痛が過ぎ去るのを静かに待つ。
 
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