想 sougetu 月
 探していた通りのラッピングを見つけられた嬉しさから小さな声で歌いながら玄関を開けると、斎が怖い顔で仁王立ちしていた。

「……」

 斎の視線が両手で抱えているショップ袋の上で止まった。

「な……何?」
「何か買って来たのか?」

 抑揚を抑え、いつもの優しい声で斎の不機嫌の度合いがわかる。
 その上、ただでさえ身長差があるのに玄関の上にいる斎に見下ろされ、少しだけ逃げ腰になってしまう。

「……ん、真ん中誕生日のプレゼント材料……」

 素直に答えたことに満足したのか、威圧的な雰囲気がほんの少しだけ柔らかくなった。

「なんだ。材料を探して出かけてたのか?」
「ん……」
「一応、お前も女なんだから、あんまり外出ばかりするな。……心配になる」
「え?」

 思ってもみなかった斎の言葉に驚く。

 私を心配して今朝は怒ってたの?
 じゃあ、こうして帰りを待っていたのは今朝のこと悪いと思ってたから?

 一見わかり難いような斎の気持ちが伝わってくる。

 社交的で誰にでも好かれる斎。
 でも本当はとっても不器用な人。

 内に入れた人間にだけ本当の姿を見せてくれるが、それでもほとんど本心を明かす事はない。
 気の向いた時だけなのか、こうして極まれに本心を聞かせてくれるのだ。
 
 斎の本当の気持ちを聞かされる度に好きになっていった・・・。
 
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