想 sougetu 月
 こうやって本心を聞いた時はばかりは、素直に謝りたいという気持ちが湧き上がる。

「……今朝はごめんね。少し言い過ぎちゃった」
「別にいい」

 斎はそっけなく答えると、くるりと背を向けてリビングへと向かう。

 言い方が少し優しい声に戻っていることに安心して、私はその背中を追いかけた。

 斎の背中を追いかける度、何度その横に並んで歩きたいと思っただろう。
 でも、斎の横は特別な女の子だけのもののような気がして、私はいつも横に並ぶことが出来ない。

 無理だとわかっているのに何度も何度も、自分が斎の特別な女の子になりたいと願った。

 斎にとって私は家族のようなもの。
 私が斎の特別な女の子になるのは無理な話。
 斎と私の間に流れる半分だけ同じ血がある限り……。

 私は泣きたいような気分になって、無理に笑みを浮かべる。

 慣れてしまったこの胸の痛みも、いずれ懐かしく思う時がくるだろう。
 この嘘の笑顔だって、本当の笑顔に変わる。

 私には時間が必要なのだ。
 斎への気持ちを薄れさせる為の時間が……。

 でも、その時が来るまでは、今は斎の側で痛みに耐えていたい。
 
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